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【外国人活用事例】整備業界(1)鈴木自動車

◆ 外国人整備人材が担う御社の海外進出

スイスのビジネススクールIMDによる調査(World Talent Report 2016)で高度外国人材を自国のビジネス環境に惹きつける力の国別ランキングが発表されている。その調査によれば日本は61カ国のうち52位。外国人が日本を選択しなくなる、その前に日本の自動車整備業界として積極的な道筋をつけておくことが重要だ。

欠かせない人材になりつつある外国人を貴重な戦力と位置づけ、就労環境や給与だけでなく、住宅などの暮らしの支援にも力を注いで、WIN-WINの関係を築いている自動車整備会社がある。

愛知県一宮市にある鈴木自動車の鈴木社長は自動車業界ではもっとも早くに外国人採用に踏み切った。自動車整備業界における外国人活用のパイオニア経営者だ。2009年より技能実習制度を活用しベトナム人材を採用。以後、10年間採用を続けている。

最初に採用したベトナム人リュウ氏の時より、採用後は鈴木社長自らベトナムを再訪し、彼らのご両親に直接挨拶に行っている。「ご両親は大事な息子さんを預けてくださる。息子さんが働く会社が安心できる会社だとご両親にも知ってほしい」、更に「10年前に面接した際に、目がキラキラしているのが印象に残った。大事な息子さんを預ける会社が安心できる会社だとご両親にも知ってほしいという気持ちからご両親に挨拶に行った」(鈴木社長)。技能実習制度では3年しか日本で働くことができなかった。1期生はすでにベトナムに戻り自動車関連企業に就職しているが、10年近く経つ今も鈴木社長との交流が続いている。鈴木社長は「安い低賃金で彼らを雇用する経営者は、この(技能実習)制度の利用を遠慮してほしい。(ベトナムの若者は)道具ではなく人だ。私は日本での彼らの父親として接し、そして育成をする」と語る。将来、鈴木社長は彼らベトナム人たちと一緒にベトナムへの進出を計画中だ。

◆外国人整備人材はクルマ屋を救えるのか?

すでに外国人を受け入れている自動車整備会社の中には、異文化の融合や、彼らの教育、言葉の壁にとまどう声も聞こえてくるように難しい一面もある。しかし、質の高い多様な外国人材が来れば、そこで働く日本人の能力を引き出す刺激になる。

鈴木社長の想いは社内にもきちんと共有されている。そして外国人に対して面倒見の良い社風が根付いた。「仕事でも根性がある。彼らをみていて日本人の従業員たちも『私たちもしっかりしなきゃ』と思ってくれたし、社内が活性化してチームワークもよくなった」(鈴木社長)。さらに「彼らが、キラキラとした眼で一所懸命に働くようになるかならないかは、受け入れ企業の組織や社員1人1人がどんな気持ちで彼らに接するかによって大きく変わる」と語る。

こうした話を聞いていると、外国人に対して愛情を持って接しているということが伝わってくる。彼らもそれに答えようと頑張るので、良い信頼関係を築けるのだろう。

自動車整備会社の経営者が考えなくてはいけないことは、単なる「人手」として考えるのではなく、彼らがいずれ母国で活躍できるようなキャリアアップを支援することだ。長期的な信頼関係を築き、将来のパートナーとして外国人整備人材を受け入れていくという考え方、仕組みが今のクルマ屋に必要だ。

◆ 外国人から選ばれる企業になるために

整備士不足の問題が社内で取り上げられると、人手確保のために、外国人を受け入れるべきか否かについて社内で議論される。しかし、多くの企業では門戸をひらけば日本に来てくれる外国人がいるという前提で話が進んでいる。「受け入れるか否か」ではなく「優秀な外国人に来てもらうために魅力ある国、選ばれる企業にどのようにすればなれるか」という議論が重要だということに気がつかなければならない。

「優秀な外国人を採用しても、受け入れ側の体制が整っていないと、うまく人材の活用はできない。入社後の育成が重要だ。」と話すのは、日本企業へ異文化マネジメント教育などを手がけるダイバーシティマネジメント研究所の河谷氏。

日本人は外国人が話す日本語の能力だけで、その外国人の人格を決めつけてしまうことが多い。彼らは宝石の原石で教育という磨きをかけないと光る宝石に変わることはない。能力は人格の一部であるということを忘れてはいけない。

人材が不足する日本の整備業界にとっては、外国人整備人材とのより良い関係づくりを目指し、長期的な取り組みで定着を図り、循環型のモデルを構築する可能性をもっと真剣に考えて行く必要がある。外国人整備人材を単なる「人手」として考えるのではなく、彼らがいずれ母国で活躍できるようなキャリアアップを支援することが受け入れ企業に求められているのだ。

2019年4月に、政府は、建設や介護などの14分野で新しい在留資格制度をスタートさせる。日本における外国人政策の基本方針の大転換だ。外国人政策の転換は、自動車整備の業界の中にも本格的に外国人が入ってくることを意味する。すべてのクルマ屋が外国人の受け入れの問題に真正面から向き合う時代がきたと言える。


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