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【外国人活用事例】整備業界(2)彌生ヂーゼル

◆スピーディーな決断でベトナムへ

整備人材として、外国人を受け入れる方法の1つに「技能実習制度」の活用がある。研修ビザという形で、技能・技術・知識を習得するため、ある一定期間の整備工場で研修(労働)を行える。2016年4月1日より外国人技能実習生制度において「自動車整備」が職種に追加されてから、少しずつだが自動車整備の外国人技能実習生が日本で働くようになってきている。

彌生ヂーゼル工業(細田健社長、東京都江戸川区)では、2017年10月から3人のベトナム人技能実習生を受け入れた。細田社長は「毎年、葛西にある高校からインターンシップを受け入れ、彼らが翌年に就職してくれていました。しかし、ある時それが突然ストップしたんです。どうしよう、まずい!今後、人材確保ができなくなる雰囲気を感じました」と外国人を受け入れた理由を語る。そのような時に技能実習制度の話を聞き2ヶ月後には荒川工場長と一緒にベトナムを訪問。「たまたま紹介を受けた国がベトナムでした。しかし後から考えてみても、やっぱりベトナム人を選んでいたと思います。宗教や国民性など日本人に近いところがあると思います」(細田社長)。ベトナムで9名の面接を行いそのうち3名のベトナム人を採用した。

◆将来の夢は?

筆者(川崎)が訪問した彌生ヂーゼルの工場では、3名のベトナム人が働いていた。現在の仕事は、洗車や車掃除、タイヤやエンジンオイル・バッテリー・ブレーキパッドなどの交換、トラック車輌整備点検などだ。

彼らは3人で共同生活をしている。休日はたまに上野や浅草にも出かけるが、近くのスーパーで買い物して家でゆっくり過ごすことが多いようだ。「日本語も難しいし、整備の仕事も難しいです。でも日本の皆さんは、みんな親切に教えてくれます。快適に過ごしています」(実習生の1人ヴェンさん)。さらに「ベトナムには車がたくさんあります。だからたくさん仕事もあります。日本で技術を勉強して、ベトナムに戻って整備の仕事をしたいです」と将来の夢を語ってくれた。

◆人物の本質的な部分を重視

技能実習生の採用に関して3点を重視。(1)自動車の免許の有無、(2)働く意欲、(3)人間性だ。「面接で『将来の夢?』などの質問をしました。9名のうち3名が『技術を身につけてベトナムで整備をやりたい』と意欲的な答えがかえってきました。また、面接では通訳を介して面接していましたが、しっかりと話す人の目をみて答えていたかなども注意をしてみていました」(細田社長)。さらに「技術的な部分より人物の本質的な部分を重視しました」と語った。

「現地での実技テストは、エンジンを分解して組み立てるというテストでした。しかし、実際にエンジンが動くかわからず実技を判断する基準にはなりづらいかと思いましたので人を重視して面接を行いました」(荒川工場長)。

◆社内での受け入れ態勢

外国人の受け入れ前は、現場からは「なぜ、外国人なんて」と言う反発の声も聞こえたと言う。どちらかといえば、ベトナム人が現場に入ってきて徐々に受け入れられていった感じだ。細田社長は「ベトナム人が実際に現場に入ってみると、真面目で、とにかく一生懸命やります。そういうところに現場社員も好感を持ってくれました」と指摘する。

研修は、最初に座学をみんなで一緒に行った。しかし、言葉ができていないとパーツも理解してもらえない。そこで、当初の予定より早く現場でのOJT研修へ変更。3名のベトナム人に別々の指導者をつけて研修すると、現場もだんだん打ち解けてきた。

ベトナム人の中で2名は若く経験もない。何をして良いかわからないので指導もしっかり必要だった。しかし、1名は年齢も他2名より高く、経験もあるため若いベトナム人のフォローもしてくれる。3名の中でリーダー的な役割をしている。

荒川工場長は「言葉の壁はまだ乗り越えていません。わかりやすいようにゆっくり話をしても軽い部分は指導できますが、高度な業務を教えたくても指導できません」と言う。日本語を習得するにも時間がかかる。定期的に日本の作文を書いて日本語習得のきっかけを与えていると言う。

◆外国人を雇用する企業へのアドバイス

「技能実習生はあくまでお金を貯めるというのがあると思います。面接では起業したいと言っていても、表面的であって本質的に考えている人をどう探すかと言うのも大切だと思います。ベトナムに帰ってマネジメントすると考えると、自らしっかりと学ぶはずだからです」(細田社長)。また、受け入れ企業は、彼らに期待する役割や、最終的にどうなって欲しいのかの方向性を説明し示してあげると言うのも重要なポイントとなる。

日本政府における外国人政策の大転換は、自動車整備の業界の中にも本格的に外国人が入ってくることを意味する。すべてのクルマ屋が外国人の受け入れの問題に真正面から向き合う時代がきている。細田社長は「技能実習制度を本当に真剣にやろうとすると彼らベトナム人を単なる労働者として考えていてはダメです。技術習得のために受け入れている!という思いを忘れてはいけません」と指摘する。日本の外国人を受け入れる企業が自ら、それぞれの制度や仕組みを理解し、採用から育成に向けた対応をし共存共栄をすると言う意識をしっかり持つことが重要となる。

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