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【外国人活用事例】整備業界(6) 山田石油株式会社

◆タイ人技能実習生を採用

山田石油サービス株式会社は、山口県内26ヶ所のガソリンスタンドを展開している山田石油株式会社のグループ会社だ。山田社長、およびグループ会社の宇多川副社長、古賀マネージャーの3名が面接場所であるタイの北部にある街チェンライを訪問。終日、タイ人の技能実習生との面接を行なった。

山田石油グループは、カーコンビニ倶楽部のFC加盟店となっている。日本で自動車整備、鈑金・塗装店舗を展開するカーコンビニ倶楽部(林社長、東京都港区)では、本部が全国のFC企業へ技能実習生の受入支援を行なっている。チェンライでの面接アレンジはそのサポートの1つとなる。

自動車整備人材として、外国人を受け入れる方法の1つに「技能実習制度」の活用がある。研修ビザという形で、技能・技術・知識を習得するため、ある一定期間の整備、鈑金・塗装工場で研修(労働)を行える。2016年4月1日より外国人技能実習生制度において「自動車整備」が職種に追加されてから、自動車整備、鈑金・塗装業界で外国人技能実習生の活用がなされるようになってきた。

◆求められる外国人整備人材の声

日本における認定工場としての自動車整備会社は約9万2,000社。日本自動車整備振興会連合会による自動車整備白書によれば、その中で約5割の整備事業会社で整備士が不足している。約1割の事業者がすでに運営に支障が出ているという。自動車の整備は、自動車ユーザーの安全確保、環境に重要な役割を果たしているが、少子化や若者の車離れの進展などにより、自動車整備士を目指す若者が10年間で半減。一方で、整備士の高齢化が進展しており平均年齢43.8歳で、約2割が55歳以上となっている。近い将来、車社会の安全、安心に直結する自動車整備を支える人材不足が更に顕在化することになる。

山田石油グループでは、過去にも面接に参加しており、すでに4名の技能実習生が日本で働く。外国人を最初に受け入れた理由と尋ねると「技能実習制度というスキームを知りました。ちょうどその時に、(カーコンビニ倶楽部に)フランチャイズの加盟をしていて、面接会のお話をいただきました。また、人手不足というのも大きな理由でした」(山田社長)。

◆受け入れてみなければわからない外国人活用

独自に行った自動車整備会社の経営者へのアンケートでも「整備の外国人技能実習生について検討しています」「自社の課題として整備人材の採用は課題であり、その解決の一助が海外からの人材の受け入れにあるのではと可能性を感じている」「外国人を受け入れたいが、マネジメントやコミュニケーションがきちんとできるか不安というのが外国人雇用における大きな壁となっている」などの声が出ている。一方で、活用に向けた最初の一歩を踏み出す企業は意外と少ない。

外国人を現在受け入れている会社も、初めての外国人受け入れには不安があった。「最初社員は不安がっていました。言葉が通じない中で仕事をしていくことに不安を感じていたからです」(山田社長)。しかし、「一緒に働いてみてわかることですが、(タイ人は)極めて優秀です。知らない国に若い人が1人で来るということはすごいこと。研修生は夢を掴み取りたいと頑張っていますので、まず受け入れてみることです。彼らの稼ぎよりも技術が上達し、生産性が上がっていきました」と指摘する。

技能実習生の受け入れを担当している吉賀氏は「彼らを教育するのは面倒くさいものではありません。手間暇かかるのは最初の3ヶ月ほどで、長期的には考えれば必ず戦力になります」と言う。更に「タイ人はサボらないですし、真面目です。元気なタイ人の挨拶などを聞いて日本人が学ぶことも多いです。彼らを受け入れてから良い感じで社内でが変わってきているのを実感しています」(吉賀氏)。

外国人の活用は会社における人手不足の解消だけではない。私(川崎)が関わったほとんどの自動車整備会社は、外国人整備人材の活用を通じて、日本人スタッフの意識が変わり、何かしらの組織活性化が起こっている。

◆外国人整備人材とどのように向き合うか?

「最初は人手不足の解消にはならないということを理解しておく必要があるかもしれません。即戦力として彼らをあてにしてもダメです。1年目は0.5人前に育ってくれれば良いくらいの気持ちがちょうど良いかと思います。3年確実にいる技能自習生と1年以内にも辞めるリスクが高い日本人がいます。現実的には外国人を雇用するしか道がないのではないでしょうか」(宇多川副社長)。更に「彼らの学んだ技術を本国でも活用できるように教育をしていきたいと考えています。彼らの人生の夢を叶えられるように教育していくことで、日本人スタッフのモチベーション向上につながると思っています」と指摘する。

まさに、日本の整備会社は外国人整備人材とどのように向き合っていかなければならない時代に突入している。自ら考えていく必要がある。外国人を安い労働者としてではなく共存できる戦力として考え、同じ釜の飯を食べ、信頼関係を構築しておくことが重要ではないだろうか。

<川崎大輔 プロフィール>
「アセアンビジネスに関わって20年が経とうとしています。アセアン各国で駐在後、日本に帰国して大手中古車企業にて海外事業部の立上げに従事。現在、アセアンプラスコンサルティングを立ち上げアセアン進出に進出をしたい自動車アフター企業様のご支援をさせていただいています。また、アセアン人材を日本企業に紹介する会社アセアンカービジネスキャリアも立ち上げ、ASEANと日本の架け橋を作ることを目指しています」。経済学修士、MBA、京都大学大学院経済研究科東アジア経済研究センター外部研究員。