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【外国人活用事例】整備業界(7) カーコンビニ倶楽部

◆年4回タイで開催、外国人技能実習面接会

2016年4月1日より外国人技能実習生制度において「自動車整備」が職種に追加された。これにより技能実習生が自動車整備の研修生として日本企業で働くことができるようになった。技能実習制度は、雇用関係のある企業において産業・職業上の技能等の習得・習熟をすることを目的として公的制度だ。

しかし、日本で働ける年数が限定されており、整備技術や日本語能力が身についたタイミングで帰国をしてしまうことを理由に躊躇(ちゅうちょ)する事業者も多くいるのは事実だ。しかし、改正入管法が施行された。これによって2019年4月から新たな在留資格「特定技能1号」での外国人整備人材の受け入れが始まった。新しい在留資格は技能実習生が移行することを基本の形として想定されている。今まで、年数が限定されているために躊躇されていた技能実習生だが、日本での5年間の就労が可能となり、技能実習時の5年と通算すれば、合計10年間働くことができるようになった。

日本で自動車整備、鈑金・塗装店舗を展開するカーコンビニ倶楽部(林社長、東京都港区)では、本部が全国のFC企業へ技能実習生の受入支援を行なっている。全国62社で技能実習生の受入実績がある。年4回、日本オートビジネス協同組合が開催する技能実習生面接会にいつでもカーコンビニ倶楽部のFCオーナーは参加できる。

◆外国人を採用する経営者の声

18年前からカーコンに加入しているFCオーナーは「本当に整備士がいません。昨年1人辞めてしまって、早く1人入れないといけない状況です。コストとしては安くはありませんが、紹介センターを使って求人をしても120万近くかかります。人材がいないと言うことに大きなリスクがありますので、外国人の活用を考えました」。

「整備士不足で、求人をしてもなかなかきてくれません。自分自身も外国人について抵抗がありましたが、まずは技能実習生の面接に来てみました」(チェンライでの面接会初参加の経営者)。更に「今回、来てみてまだ漠然としか考えていないのですが今後は外国人を増やしていこうかと考えてます。まずは、今回面接したタイ人の技能実習生と一緒に働いてみてからですが」と外国人の増員に前向きに考えていた。

また別の経営者は、「1名をトライアル採用しようと思ってきました。知り合いの会社ですでに技能実習生を雇用している会社も見てきましたが技術力が高そうでした。少し年齢が高い弊社の工場長はすぐに外国人活用にOKを出しました。理由として『今の若い人たちはハングリー精神がない』と言っています。しかし、他の従業員はまだ外国人の活用には抵抗を持っているようですので、どうやって受け入れてもらうかはこれからです」と指摘する。

◆リピーター率93%の技能実習生採用

リピーターも多い。カーコンビニ倶楽部によると技能実習生のリピート率は93%となっている。「とにかく整備人材が足りません、日本人が取りづらい状況が続いています。以前も採用していますが、今回は複数名採用を検討してここにきました」(新車ディーラーも経営するリピーター経営者)。

山田石油サービス株式会社もリピーター企業だ。山口県内26ヶ所のガソリンスタンドを展開している山田石油株式会社のグループ会社だ。カーコンビニ倶楽部のFC加盟店にもなっている。過去にも面接に参加しており、すでに4名の技能実習生が日本で働く。今回の参加で2名の技能実習生を採用した。「初めての外国人採用の時は社員は不安がっていました。言葉が通じない中で仕事をしていくことに不安を感じていたからです」(山田社長)。しかし、「一緒に働いてみてわかることですが、(タイ人は)極めて優秀です。知らない国に若い人が1人で来るということはすごいこと。研修生は夢を掴み取りたいと頑張っていますので、まず受け入れてみることです。彼らの稼ぎよりも技術が上達し、生産性が上がっていきました」と指摘する。

◆外国人整備人材と真剣に向き合う時代がきた

カーコンは、タイの北部チェンライに技能実習生の研修施設として基本的なカーコン技術を学べる研修所をつくった。カーコンビニ倶楽部の実習生事業部の責任者である花形氏は、「活用の魅力は、タイの自動車整備学校を中心に人材募集をかけて、現地で自動車修理の基礎研修を教える体制をとっています」と指摘する。更に「FC企業の皆様は人材の不足に困っています。塗装工として技能実習生として来ますが、チェンライでカーコン新工法を研修しているため、日本での助走期間を短縮させることができます。受け入れ後のサポートはカーコンビニ倶楽部のFCサポート部が行なっています。タイ人を理解し、どのようにすれば伝わるかを考えるのは我々の責任。彼らを理解し大事にすることが大切です。言葉はなくても思いは通じます」と語る。

国内で自動車整備人材の不足が加速化する中、社会・会社の一員として、共に生きる仲間として、迎え入れる覚悟が必要だ。自動車整備業界は外国人とどう向き合うのか真剣に向き合う必要がある時期にきている。


<川崎大輔 プロフィール>
「アセアンビジネスに関わって20年が経とうとしています。アセアン各国で駐在後、日本に帰国して大手中古車企業にて海外事業部の立上げに従事。現在、アセアンプラスコンサルティングを立ち上げアセアン進出に進出をしたい自動車アフター企業様のご支援をさせていただいています。また、アセアン人材を日本企業に紹介する会社アセアンカービジネスキャリアも立ち上げ、ASEANと日本の架け橋を作ることを目指しています」。経済学修士、MBA、京都大学大学院経済研究科東アジア経済研究センター外部研究員。