1. トップページ > 
  2. コラム > 
  3. 【外国人活用事例】整備業界(12) ホンダサロン石川

【外国人活用事例】整備業界(12) ホンダサロン石川

◆新しい雇用促進プログラム

株式会社ホンダサロン石川(平田他喜夫社長、石川県金沢市)は、ベトナムからインターンシップとして自動車メンテナンス学部の大学生2名を受け入れた。ベトナムの理工系大学と提携し、日本語教育を受けた高度人材の雇用促進プログラムとして立ち上げたACCが提供する「インターンシッププログラム」での受け入れだ。本大学では必須科目として日本語を学び、卒業時に日本語能力試験のN3レベルの習得を目指す。3年生もしくは4年生の時に半年間日本でインターンシップ生として学ぶ。

学生は、お金をもらいながら日本で就業体験が行えるというメリットがある。更にインターンシッププログラムとして大学から授業単位ももらうことができる。受け入れ企業にも大きなメリットがある。国内で整備士不足が深刻化する中、外国人活用が広がっている。しかし、いきなり外国人を採用するには、まだ不安な企業もある。インターンシッププログラムはテスト採用としての位置付けがある。受け入れ企業は、現地の大学に面接に行き自ら選抜した学生をインターンシップ生として受け入れる。半年間のインターンシップが終了し、学生基準が企業にマッチした場合、大学卒業後に正式採用する選択肢がある。一緒に働くことでお互いのミスマッチを防ぐことができる。優秀な人材の優先確保という意味でもメリットがあるだろう。ベトナムでインターンシッププログラムを行なっている大学は日本では国立大学並みのトップレベルの優秀な学生たちだ。

インターンシップログラムによって、優秀な人材の安定確保が可能となる。日本では自動車整備エンジニアの確保が難しい。そのため、新しい雇用促進手段として、日本企業がこのプログラムを活用し始めている。ホンダサロン石川は新車販売店として初めてベトナムから自動車整備のインターンシップ生受け入れた企業となった。

◆インターンシップ受け入れまでの経緯

2019年にホンダサロン石川の平田副社長と山崎店長が、ACC主催のインターンシップ生面接ツアーに参加。インターンシッププログラムを提携しているホーチミン工業大学を訪問した。2名のインターン採用(予定)に対して10名以上の優秀な学生がエントリー。平田副社長は、彼らに対して自社のプレゼンを行った。皆、真剣に平田副社長の声に耳を傾けていた。その日のうちに全員と面接を行い2名を決定。在留資格の手続きを経て、2019年10月に日本に入国してきた。2名のインターンシップ生は、ホンダカーズ石川西のホンダ販売店、入江店と西インター店にそれぞれ着任した。

「ベトナム人のインターンシップ生の受け入れについては、副社長が将来の海外ビジネスへのきっかけとして考えたことが始まりだと思います。面接にあれだけの多くの学生が集まってくれたのには驚きました。面接では、一緒に働きたいと思う人柄かどうか、そして日本に行きたいという思いが強いか、ということを意識して人選しました。採用したサン君は履歴書も素晴らしく、論理的な文章が書かれていたのを覚えています」(山崎店長)。

受け入れまでの経緯については「ある日、大手損保会社からベトナム視察の声がかかり参加しました。2019年1月にその視察でベトナムの大学などを訪問して、海外の優秀な学生がどんなものなのか関心を持ちました。また現地の新車ディーラーを訪問し、将来的なベトナムにおける自動車市場の可能性にも興味を持ちました。そこで彼らをインターンシップとして受け入れてみるため、4月にベトナムを再び訪問しました」(平田副社長)。

◆外国人受け入れるには?

ホンダサロン石川では、販売店(西インター店)の上にある空きスペースをリフォーム。インターンシップ生2名が住めるような部屋に仕上げた。シャワールームもリノベーションし整えた。現在、サン君とタイ君は2人で一緒に会社が用意してくれた部屋に住んでいる。毎朝、サン君は自転車で15分ほどの距離にある入江店へ、タイ君はすぐ下にある西インター店へ向かう。

日々、販売店でインターンシップ生と接する山崎店長は「まだインターンシップを受けれたばかりのため、たくさん不安なことはあります。お店のスタッフたちはインターンシップ生がコミュニケーション取れなくて寂しいそうと言っていました。私たちも外国人の受け入れは初めてですので、コミュニケーションにまだギャップを感じているのは事実です。しかし、彼らインターンシップ生には強い意志とやる気を感じています」と話をしてくれた。

サン君の誕生日に、平田副社長やスタッフたちで焼肉屋に一緒に食事に行くなどの交流も行なっている。そのような場では、インターンシップ生も緊張がなくなり、色々と自分たちの話をしてくれる。「外国人を受け入れるには、もっと彼らのことを知ってあげないとと思います。我々日本人がもっとインターンシップ生に歩み寄って、会話などもわかりやすく話をしてあげることが必要だとわかってきました」(山崎店長)。

異文化や、彼らの教育、言葉の壁にとまどう声も聞こえてくるように難しい一面もある。しかし、インターンシップ生へのホスピタリティがお客様へのホスピタリティへと繋がり、そこから新しい組織の活性化が起こることは間違いない。彼らが、真剣に日本語や技術を学ぶか、そして日本との架け橋を創り上げるか。それは日本の受け入れ企業の組織や社員1人1人がどんな気持ちで彼らに接するかによって大きく変わる。

◆日本の社員に刺激となる外国人

日本における人材の不足、グローバル化、激変の日本の自動車業界。この時代の課題を解決し、生き残り、そして成長を実現するために、日本の自動車業界は外国人エンジニアの活用にもっと真剣に目を向ける必要があるのではないだろうか。

外国人人材は、安い労働力として活用できると言うイメージが先行していた。しかし、外国人を安い労働者としてではなくパートナーとして考えていく。同じ釜の飯を食べ、信頼関係を構築しておく、そうすることで、数年後に彼らが母国に帰国した後もビジネスパートナーとして捉えることができる。このような考え方や仕組みを今の自動車業界はしっかりと考えなければならない。

日本の会社では「社内に外国人労働者を受け入れるべきか否か」という議論がなされている。しかしそこには大きな問題が隠れている。つまり「門戸を開けば外国人はきてくれる」という前提での議論だということだ。今一度考えて見てほしい。優秀な外国人労働者は本当に日本で働きたいと望んでいるのだろうか?すでに優秀な外国人の国際獲得競争が始まっている。雇用するには「選ぶ」ではなく「口説く」という姿勢が必要だ。「もう日本では働きたくない」と本気で外国人が日本に背を向けるようになる前に我々は真剣に彼らとの共存を考える必要がある。

ベトナム人のインターンシップ生に今後期待されることは、彼らが成長し日本とベトナムの自動車業界の活性化を担う人材となること。更にインターンシップが終了し大学を卒業した後に、正規雇用として日本で働くことであり、受け入れ企業としては優秀な自動車整備人材として獲得することも期待している。そのような点から今後、人材不足に悩む新車ディーラーにとって魅力的なプログラムになっていくのではないだろうか。新車販売店で初めてホンダサロン石川がインターンシップの受け入れ踏み切ったその試みは、未来に向け、共生社会を実現できる第一歩を踏み出す鍵となるだろう。