1. トップページ > 
  2. コラム > 
  3. 【外国人活用事例】整備業界(13) 株式会社小倉自動車

【外国人活用事例】整備業界(13) 株式会社小倉自動車

◆コミュニケーションは不安であったが、、、

株式会社小倉自動車(小倉 龍一社長、神奈川県座間市)は、創業50年の会社だ。鈑金塗装修理と車検のトータルカーメンテナンスを行なっている。2019年1月より、ベトナム人塗装技能実習生2名が小倉自動車で働き始めた。

「普段から米軍Yナンバーの車なども板金塗装で入ってくるという土地柄もあるのかもしれませんが、従業員たちはベトナム人の受け入れに対して大きな反対はありませんでした。」と、話すのは小倉社長だ。しかし、初めての外国人の受け入れに全く不安がなかったわけではない。「コミュニケーションに関しては従業員でも不安に思っていたようです。私自身も言葉は不安でした」(小倉社長)。だが、実際に受け入れてみると思った以上にコミュニケーションが取れることがわかったという。「受け入れ当初、我々が彼らベトナム人に近づいていかないとダメと思っていました。しかし実際は逆で彼らが近づいてきてくれました」と語る。受け入れ当初はポケトークを使ってコミュニケーションをとっていたが、結局1ヶ月ほどで使わなくなった。

◆愛情と思いやりを持って接することが重要

2名のベトナム人たちは、メインが塗装業務で、そのほかに鈑金の下地作りなどの業務も行なっている。独身寮になっている工場の2階に2人で住んでいる。「今、彼らに言いたいことは特にありません。強いていうならよく遊ぶ!休日になると遊びに行いきます。だからどこに行くか、いつ帰るか、だけは伝えるように指示しています。あとは自由にのびのびと仕事、生活をやってもらっています」と小倉社長は笑って話す。

「外国人だからということでなく、仲間を受け入れるという気構えがないとダメだと思います。外国人だからということで特別扱いはしません」(小倉社長)。更に「従業員は朝礼で順番に発表をするようにしています。当然、ベトナム人にも発表の機会があります。何度もやっているとだんだんベトナム人も上手になってきます。あるときベトナム人が『工場の横に段ボールを捨てるとき、細い段ボールは奥に持って行って捨てましょう!手前に捨てると邪魔になるからです』といって、従業員が気がつかなかったことしっかりと指摘しました。その時、朝礼は笑いの渦になりながらも、それ以降、細い段ボールは奥に捨てられています」と語ってくれた。

こうした話を聞いていると、ベトナム人に対して愛情を持って接しているということが伝わってくる。想いは社内の従業員にも共有される。それがわかるのでベトナム人も近づいてきてくれ、良い信頼関係を築けるのだろう。受け入れ側の考えがしっかりとしていないと、いつまでも外国人を助手のように扱う。そのような考えではうまく続いていかない。例えば、怒るにしても「怒るではなく叱る」。ベトナム人の将来を本気で考えているから叱るのであって、感情で怒ってはダメだ。受け入れ企業の社長や社員1人1人が愛情と思いやりを持って彼らに接することができるかどうか。これから外国人を受け入れていく企業にとって重要なポイントとなる。

◆人材不足というより、技術伝承の可能性を知りたい

受け入れを決めた背景として、人手不足というより、鈑金塗装の技術の伝承をどこまでできるのかという現実を知ることが大きかった。創業以来、職人技術の伝承ができていなかった。彼らベトナム人に教育をすることで、どういった技術をどのレベルで伝えていけるのか、技能実習生を活用してやってみたかったという動機が強かった。

「皆さんは、技能実習生は人手不足の補充という感覚が強いですが、しっかり教育をしてあげないとこの制度は続かないでしょう」(小倉社長)。更に「大事なことは、日本人がしっかりとベトナム人を教育すること、それには日本人も技術、および人間的にも教育できるレベルにいないといけません。受け入れ企業がそのことをしっかりと理解していないとダメです」と語る。

教育には時間が必要だ。多少余力があるうちに教育をしてくことが大切になる。今の、鈑金塗装の技術者は、50歳以上の方々が多い。しかし、今後日本人の若手が採用できるかといえば難しい。となれば、外国人の受け入れ、そして彼らへの教育に真正面から向き合う必要があるのではないだろうか。

自動車台数の減少などの要因により、最近では鈑金の需要も右肩下がりだ。しかし熟練の技術者の減りの方が早い。だからこそ鈑金塗装の技術を持った外国人を育てていく必要があると感じているという。「彼らの意識、やる気はすごく高いです。とにかく最初はやることがなければ掃除と片付けをやってほしいと言ったら、本当に熱心にやってくれる彼らをみて、思った以上のやる気を感じました」(小倉社長)、更に「彼らベトナム人にこれから期待することは、実習研修期間が3年目に入った時、どれくらいの技術を身につけたのか?それをまず知りたいです。板金塗装業界における外国人活用の可能性、さらにこの後の外国人活用の継続可能性について、理解する大きな経験になると思います」と語る。

<川崎大輔 プロフィール>
「アセアンビジネスに関わって20年が経とうとしています。アセアン各国で駐在後、日本に帰国して大手中古車企業にて海外事業部の立上げに従事。現在、アセアンプラスコンサルティングを立ち上げアセアン進出に進出をしたい自動車アフター企業様のご支援をさせていただいています。また、アセアン人材を日本企業に紹介する会社アセアンカービジネスキャリアも立ち上げ、ASEANと日本の架け橋を作ることを目指しています」。経済学修士、MBA、京都大学大学院経済研究科東アジア経済研究センター外部研究員。