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【外国人活用事例】整備業界(14)  滋賀ホンダ株式会社

◆外国人活用から海外進出へ

滋賀ホンダ販売株式会社(丸本博社長、滋賀県草津市)では、ベトナム人技能実習生(整備)を雇用している。きっかけは人手が足りないためだ。2018年12月にベトナム人技能実習生3名が入社。さらに半年後の2019年6月に別の3名のベトナム人が入社し、現在、合計で6名のベトナム人が働いている。

滋賀ホンダでは、自動車関連ビジネスでのベトナム展開を考えている。2020年中に現地で自動車整備工場をオープンする予定だ。「技能実習生を受け入れたのはいいのですが、3年で本国に返す。そうすると技術がもったいないと思うようになりました。そうであれば、彼らが帰った時に受け皿になるよう、ベトナムで自動車整備工場を作って行こうと考えたのです」(丸本社長)。更に滋賀ホンダの専務取締役であり営業部長の川端専務は「ベトナムでは受け入れ先がないことが多いです。これをどこまでわかった上で、今後の事業計画を考えるのかは我々にとっても彼らにとっても大切です。彼らがベトナムに帰ったあとのことまで考えられるか。つまりベトナムでビジネスをやるか、やらないか、ということを検討しました」と語る。日本における技能実習生活用のきっかけから、ベトナム進出につながった好例だろう。

◆1拠点複数名から1拠点1名での対応へ

初めてということで受け入れ直後の従業員の負担は大きかったようだ。「文化の違いによる日本での生活。言葉のコミュニケーションは最初不安でした」(丸本社長)。更に「忙しい中、外国人の対応もしなくてはいけない。こちらも慣れていないし、外国人も慣れていないし、不満とストレスがありました」と語る。

川端専務からは「1拠点で1名の対応にしてから楽になりました。ベトナム人もそれぞれ性格が違います。また言語を習得するスピードも異なります。1拠点で複数のベトナム人にならない方が負担が少なくて良いと思います」とアドバイスあった。「最初の1ヶ月ほどはサービス部長が、現場に張り付いて、仕事面、生活面含めてサポートを行いました。コミュニケーションもこちらの想定をかなり下回る日本語能力で、『ここまで話せないんだ、、、』とそれは結構大変でした。本社側のサポート担当者が、実際に現場に行って対応を行なっていました。当時は、1拠点で3名同時に受け入れを行なっていました。同じベトナム人同士で働けた方が良いと思ったためです。しかし、今は後からきたベトナム人含め6名ともバラバラの拠点で働いてもらっています。現在は洗車、空気圧チェック、タイヤ交換、オイル交換などの業務を担当してもらっています」(川端専務)。

うまくベトナム人を受け入れられるようになったのは企業側の努力だけはない。ベトナム人も打ち解けようと努力をしていることを忘れてはいけない。丸本社長は「面接時の選考では、明るい、笑顔、受け答えなどをみて人間性を重視しました。日本語能力や自動車整備経験はそれほど考慮をしなかったです。人間性を重視したからか、うちにきてくれたベトナム人は総じてモチベーションが高い。掃除もしっかりやるし、挨拶も大きな声で元気にしてくれます。そういうのを見て従業員も徐々に受け入れるようになってくれたのでしょう。今では各店舗でそれぞれ食事会などやっていてベトナム人も参加しています」と語る。

外国人の受け入れ体制の構築に正解はない。各社各社で異なるのが当然だ。ただし、
成功している事例を完全に真似るのではなく、自社にカスタマイズして導入していくことは成功への近道だと言えるだろう。

◆ベトナム人活用における3つの課題

1つ目はコミュニケーションの課題があるという。「コミュニケーションが一番最初の問題でした。最初はGoogle翻訳などを活用して意思疎通をはかっていました。この時のストレスをどのように乗り越えるのかというのは課題だと思います」(川端専務)。

2つ目は社長や役員が、外国人受け入れの意味合いを、社内にしっかりと伝えていく必要があるということ。入社後の、外国人採用の意義が社内で浸透していないために配属先で孤立してしまい退職に至るケースがある。うまく行っている企業では、どの上司の下につけて働かせるか、配属先をよく考えている。

3つ目は、安い人件費として見ないこと。「人手はなく人材として受け入れ側がしっかり見てあげることが必要です。そうでない会社があるのは大きな課題だと思っています」(丸本社長)。更に「滋賀ホンダで見れば、将来はベトナムでのビジネスへシフトしていきたいと考えています。そのためには、彼らにはすでに伝えていますが、ベトナムの整備工場におけるリーダーを目指して欲しいと思っています。ベトナム、日本に関係なく、人格育成、そして成長していって欲しいです」と話す。

◆新しい発見に触れられるメリット

日本の整備工場で外国人を雇用拡大していくため、彼らを日本人と同等に扱うのは大前提だ。その上で、丸本社長は『異文化だから大変だと捉えるのか、それとも刺激(新しい発見)と捉えるか』で全く違う見方になることを強調する。「受け入れ側がそういう姿勢を持つのが大切です。そのほかいろんなメリットもあります。それをメリットと思える見方をする人は成長をします」。更に「人手ではなく日本人を採用する気持ちで接してあげると良いです。外国人も大切にされる気持ちがわかると恩返ししてくれます」と、積極的に新しいことを受け入れるメリットに気が付いたと語る。

「今、外国人の活用がうまく回っているのは社員のおかげです。実際、この後は日本人だけでは難しいと思います。優秀な人材が採用できるうちにしっかりと受け入れ体制を整えていくことが大切だと思います」(丸本社長)。

これからの国内新車ディーラー考えなくてはいけないことは、外国人を単なる安い人手ではなく、長期的な戦力として共存共栄の道を考えていくことが重要だ。彼らがいずれ母国で活躍できるようなキャリアアップを支援することが、求められている。

<川崎大輔 プロフィール>
「アセアンビジネスに関わって20年が経とうとしています。アセアン各国で駐在後、日本に帰国して大手中古車企業にて海外事業部の立上げに従事。現在、アセアンプラスコンサルティングを立ち上げアセアン進出に進出をしたい自動車アフター企業様のご支援をさせていただいています。また、アセアン人材を日本企業に紹介する会社アセアンカービジネスキャリアも立ち上げ、ASEANと日本の架け橋を作ることを目指しています」。経済学修士、MBA、京都大学大学院経済研究科東アジア経済研究センター外部研究員。