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【日本企業様向けコラム】日本における技能実習制度の光と陰

日本における技能実習制度の光と陰(1)コンビニも技能実習制度の対象に?

都内のコンビニを経営するオーナーは「店の前にバイト募集の張り紙を出して1年経つけれど、全く反応がない」「外国人は雇ったことないですが、今後は考えないとお店が回らない」と嘆く。シフトが組めないときは深夜でもオーナーが自ら対応している状況だ。コンビニの大手3社は、加盟店向けに外国人雇用の説明会を開いたり、多言語対応の業務マニュアルを作成したり、外国人アルバイトの受け入れを進めている。テレビのCMにも外国人スタッフが登場するようになった。ファミリーマートではCMにベトナム人スタッフが登場している。現在、コンビニで働いている外国人は留学生だ。外国人留学生に聞くと、ほぼ100%の留学生がアルバイトをしている。出入国管理法で「原則的に週に28時間まで」労働時間の上限は決められており違法性なく働ける。この週28時間の規制は世界的にみればかなり緩い方である。仮に、時給1000円で計算すると、週給2万8000円だ。4週間働くと11万2000円の稼ぎとなる。留学生ビザは、日本語学校などへの授業料がしっかり支払いがなされていれば簡単に取得できる。最近急増しているベトナム人やネパール人の留学生の多くが、借金をして授業料を払って日本にやってくる。間には業者が介在し、日本で働いた賃金から借金を返済することになる。留学生は働く資格がないため「資格外活動」としてアルバイトを行っている2013年に10万8492人だったが2017年には29万7012人と5年で約3倍になった。

日本人の学生からみればコンビニは時給が安いから、それならばカラオケボックスで働く方が良いと人気はないアルバイトだ。しかし外国人はコンビニを選んでいる。なぜならお客さんと話すので日本語も勉強しやすいし、またお店によっては廃棄のお弁当を食べても良いから食費も浮くという。更に最も大きな理由はやはりコンビニの人手不足にあるようで、面接に行けば日本語があまり話せなくても不採用になることはほとんどないと聞く。

2017年12月、新聞メディアにコンビニ各社が加盟する業界団体「日本フランチャイズチェーン協会」(東京都)が年明けにも、外国人技能実習制度の新たな職種に、コンビニの運営業務を加えるよう国に申請するという記事が掲載された。大手各社は海外展開を進めており、日本で経験を積んだ実習生に母国での店舗展開を担ってもらう狙いと記されていた。ローソンの竹増社長のインタビュー記事では、「レジ係に限らず、コンビニには商品の発注や店舗の清掃など小売業のノウハウが満載だ」「コンビニ業務を身につけて自国に帰れば、その国の小売業で活躍できる」と語り、決して人手不足対策ではないと強調していた。この竹増社長の発言が「建て前」であることはミエミエでありネット上などで猛烈な批判の声が上がった。

しかし、コンビニの技能実習への追加の記事を見てすごく疑問を感じた。技能実習制度とは「日本が先進国としての役割を果たしつつ、技能・技術または知識の開発途上国等への移転を図り、開発途上国等の経済発展を担う」ことが目的だ。コンビニというサービス業でどんな技術を学べるのか、また日本のコンビニが進出している国々がどれだけあるのだろうか。さらにその基本理念として「技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」(第3条2項)と記されている。しかし、コンビニでは明らかに労働力不足を外国人労働者が埋めるという単なる人材供給制度になっていた。

コンビニ業界が「技能実習制度」に業種追加をしているのは、留学生の資格外活動に厳しい目が向けられつつあることと無縁ではない。竹増社長が「人手不足対策ではない」と言い張らなければならないのにも多少の同情心は持てる。「はい、人手不足対策です」と言えば、コンビニ店員を技能実習生として受け入れられる道はなくなる。技能実習の制度自体が今は建て前の制度だからだ。現在の技能実習制度では、造船業が存在しない国からやってくる労働者でも造船業界で技能実習生として働けている。故にコンビニがない国からやってきた若者も働くことができるという建て前は存在するだろう。本来は労働力として受け入れたいのだが、国が「単純労働社は受け入れない」「移民制度は取らない」という態度を続けているために、技能実習制度がその穴を埋める建て前制度にならざるを得なくなっているのが現状ではないだろうか。

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日本における技能実習制度の光と陰(2)転換期の技能実習制度

技能実習制度とは「わが国が先進国としての役割を果たしつつ、技能・技術または知識の開発途上国等への移転を図り、開発途上国等の経済発展を担う」ことが目的だと記載されている。発展途上国の外国人を日本で一定期間受け入れてOJTを通じて技術や技能、知識の移転を図る制度となっている。その国の経済発展を担う人材育成を目的としたもので、日本の国際協力の重要な一翼を担っている。現地の送り出し機関(仲介業者)を通じて、地域や業種など組合単位で受け入れた実習生を、各企業に送るシステムとなっている。現在、日本に来ている技能実習生の数はおよそ25万人だ。

1993年に成立した当初は、アセアン各国から日本の最先端技術を学ぶ制度として始まり、高い理念のもとスタートした。しかし、徐々に日本人が集まらず、就労資格としても認められない業種の抜け穴として機能するようになり、次第に実習生は労働力に置き換えられるようになっていった。単純作業の繰り返しで名ばかりの実習であるケースや、安価な労働力として実習生を使っているケースなどにより失踪する問題が出てきた。そういう背景を受けて、2017年11月からは適正化法が施行され、第三者期間が受け入れ団体や企業を監督する制度が導入された。在留期間は93年には研修1年、実習1年の2年間だったが、97年には実習期間が2年に延長され、合計3年となった。その後しばらく期間延長は実現しなかったが、2016年成立の技能実習法によって最長で5年間の滞在が可能となった。技能実習の対象職種も拡大。制度創設当初は、外国人に対する職業訓練という見地から、技能検定可能な職種として製造業・建設業を中心とする17種に限られていた。しかし、溶接、漁船漁業などが相次ぎ追加された。対象に追加された職種数をみると、2009~2012年は年0~1職種だったが、2017年は介護など3職種が加わるなどペースが速まっている。さらに厚労省は2018年9月にも漬物製造を対象とするほか、ホテルなどの寝具類を貸し出すリネンサプライも新たに加える方針だ。

全日本漬物協同組合連合会は「中国などでニーズがある仕事だ」と説明する半面、「業界として若年の人材が足りないことも事実だ」という。海外への技能移転や人材育成という「国際貢献」が本来の目的だが、近年は幅広い業界団体が制度適用の要望を強めており、人手不足対策の色彩を一段と濃くしている。

前述のコンビニはうまく行けば2019年には技能実習生のコンビニスタッフが誕生することになるだろう。また、コンビニが成功すれば、レストランや居酒屋などその他のフランチャイズも技能実習制度の職種として加わることになるのだろう。新しい追加職種は柔軟に受付されることになる。その中では「業界団体」の存在が重要であり、業界団体がしっかりと声をあげれば外国人労働者受け入れの道が大きく開いていくことになる。

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日本における技能実習制度の光と陰(3)不正が絡む技能実習制度の枠組み

技能実習制度に関わるプレーヤーは、大きく3プレーヤーいる。「受け入れ企業」「送り出し機関」「監理団体(組合)」だ。

受け入れ企業とは、技能実習生を受け入れる日本の企業のことだ。現在、全国に約25万人の外国人技能実習生がいる。彼らのほとんどは単純労働者だ。住居(寮)と仕事場を往復する毎日で閉鎖的な生活だ。コンビニなどでアルバイトをしている留学生とは異なり、働く様子が世間の目に触れることも少ない。

厚生労働省は2017年8月に、2016年度に外国人技能実習生を受け入れた企業を視察した結果を発表した。視察した5672社のうち70.6%に当たる4004社で労働基準関係法令違反があった。中には実習生に違法な時間外労働を課す企業や給与を支払わない企業など悪質なケースもあったという。

外国人の労働問題などを取材している出井康博氏の著書「ルポ ニッポン絶望工場」(2016)などでも、その過酷な実態がリアルに紹介されているのでご存知の方も多いかと思う。ブローカーや送り出し機関に半分騙された形で借金を背負って日本にやってきたが、受け入れ企業で労使協定を上回る残業、健康障害の防止措置の未実施契約書不履行、賃金/残業代の未払い、セクハラ、パワハラ、暴力など、悪質な受け入れ企業が実習生に劣悪で低賃金な労働を強いているという実情もあるようだ。当然のことながら制度を利用している受け入れ企業の経営者が全て悪徳というわけではないことはここで強調しておく。

送り出し機関とは、例えばベトナムであれば、現地で実際のベトナム人技能実習生を募集し、日本に送り込んでくる組織だ。ベトナム政府認定送り出し機関が約240社存在する。全てではないが中には悪質な送り出し機関も存在する。法外な手数料を設定し、教育をおざなりにし、手数料を手に入れることしか考えず、客を選別せず、とにかく数ばかり追う送り出し機関を指す。

実習生の負担する費用の中で一番大きいものが、ベトナム法で3,600USDと規定されている俗に言う「手数料」。法定上限は3,600USD(DOLAB 海外労働管理局)で設定されている。しかし実際の相場は5,000〜6,000USDとなっている。日本語など教育を完了する前の徴収で返金が不可となる条件の場合、質の悪い実習生であっても無理やり期間内に企業送り出されるため後で問題になるケースもある。日本語能力などが一定水準に達成できない実習生は試験などでフルイにかけ、送り出しを見送るという割り切りなども必要で、そうしなければ日本に行ってからの問題発生率が増加してしまう。また、日本へ行きたいベトナム人を送り出し機関に紹介するベトナム人ブローカーがおり、受け入れ企業による採用面接に合格した時点で、実習生は500USD~2,000USDをそのブローカーに支払う構図も存在する。

管理団体(組合)は、現地の送り出し機関と契約を結び、集められた人員の中から、受け入れ企業の要望にあった人材を確保する。さらに受け入れ企業での技能実習が適正に実施されているかの確認と指導をしていくことがその役割となる。悪質な監理団体とは、実習生を採用して「あげる」から、キックバック(一人採用当たり500USD~1,000USD)を要求したり、法に定められた費用の値下げや支払いの拒否、過度な接待の強要などが挙げられる。法に定められた費用とは、管理費(3年間毎月発生)、講習委託費(入国前の学費)、実習生入帰国時の航空券だ。監理団体(組合)からの実習生採用のオーダーがなければ技能実習生は日本にくることができない。また送り出し機関が乱立し、安売り価格競争をしている。そのため本来は対等である力関係が、監理団体(組合)の方が送り出し機関よりも強い立場にある。

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日本における技能実習制度の光と陰(4)技能実習の人権を守るために

技能実習制度を悪用する受け入れ企業を取り締まるべく2017年1月に、認可法人「外国人技能実習機構」が新設された。受け入れ企業先の企業が実習計画を機構に提出し認可を受ける必要がある。新たな制度によって実習生の人権がより慎重に保護されるようにチェックが厳しくなった。計画の履行がされていないなどの場合、実習生たちから企業に対して約束違反を訴えることなどが可能になったということで一定の評価がある。

日本の受け入れ企業には、日本人と同等の給与を支払い正面から実習生と向き合っている経営者もいる。私の知り合いの経営者はベトナム人の実習生を毎年2名ずつ雇っているが、採用の際には自ら現地に出向いて、採用後には必ず彼らの田舎の両親に会い自らの会社をしっかりと説明する。安心して日本に来られるように彼ら家族とより親密な関係を築く。更に実習生がなるべく生活費を安く抑えられるように社宅も用意している。

高い理念のもとに技能実習制度を活用しているプレーヤーも存在するのは事実だ。しかし、そうでないプレーヤーもいる。日本に来た技能実習生をしっかりとモニタリングを行える体制、さらには技能実習期間終了後に自国へ帰った後の受け入れ体制は再度見直す必要がある。帰国後のサポートを行う日本の統括機関は今のところ存在しない。日本で技術や技能、知識を学んだ人材が、自国に帰国してからも活躍できるような「循環システム」を作ることが重要な施策になると個人的に考えている。

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日本における技能実習制度の光と陰(5)各国の外国人労働者制度

<韓国>
日本では単純労働者について技能実習制度があるが、韓国では日本の先をゆく「雇用許可制度」という制度で単純労働者についての受け入れ態勢を整え積極的に受け入れている。元々は、日本の技能実習制度に似た研修制度を活用していたが、2004年に「雇用許可制」が導入され、2007年に研修制度は廃止された。国際的にも評価の高い制度で、2011年には国連より表彰を受け日本より2、3歩先を走っている。この制度の特徴として4つの原則がある。

(1)労働市場補完性の原則:高度人材と同じように労働市場テストが義務付けられている。また、受け入れ人数の上限の設定などによって、韓国人の雇用を守りながら必要な外国人を必要な人数受け入れるための原則だ。(2)外国人労働者受け入れプロセスの透明化の原則:韓国政府が全プロセス(労働者送り出し国との2カ国間協定の締結、人材のマッチング、韓国語教育、技能研修から帰国まで)を実施。過去の研修制度においては民間事業者やブローカーによって不正が横行したため、雇用許可制では政府が全てのプロセスを実施することで透明化を図る。(3)均等待遇の原則:労働三権、最低賃金の保証、保険適用が含まれる。これも、研修制度において研修制の労働環境や条件が問題となったことが背景としてある。(4)短期ローテーションの原則:雇用許可制度は、雇用期間が終了すれば自国に戻ることが前提であるため、3年間に制限して定住化を防止している。日本の技能実習制度が(建て前としては)、途上国に対する技術移転という国際貢献を前提にしているのに対して、韓国の雇用許可制度はストレートに外国人の単純労働者を正規の労働者として受け入れるための制度となっている。人材募集に関しては、東南アジア諸国のほか、ウズベキスタンなどの中央アジアの国々とパートナーシップを締結。翌年受け入れる予定の外国人労働者枠を事前にこのようなパートナーシップ国に通知し、枠は韓国政府が各産業の状況に基づき決定する。また、政府機関の「外国人力支援センター(全国に8箇所)」は、外国人労働者の仕事や生活の相談に乗るほか、必要な場合には援助も行い、帰国前には母国での就職を見据えた技術指導も行う。こうした近年の韓国の状況を見て、日本からも官民の組織が視察に行っている。

<イギリス>
これから生産労働人口が減っていく国は日本だけではない。ヨーロッパは2010年に生産労働人口のピークを迎えている。そのような状況の中、諸外国は優秀な高度人材を受け入れるために戦略的な体制を構築している。2004年のEU拡大に際して、東欧諸国(EU8)からの労働者の就労を原則自由化した。その結果2009年までで年間20万人前後の外国人が流入。農業、宿泊業、製造業、食品加工などの単純労働者に従事した。急激な労働者の流入があり、域外からの外国人受け入れに関する引き締め策としてポイント制を2008年から導入。従来の80程の種類のビザがあったが5階層に整理した。この制度の下では、外国人は第1階層:高度技術者、第2階層:専門技術者、第3階層:単純労働者、第4階層:学生、第5階層:他の短期労働者・若者交流プログラム等、と分類。審査基準の明確化、手続きの簡素化(入国・就労許可の一体化など)が行われた。イギリスの制度の特徴として、外国人がビザを取得するためには、イギリス内ではこの仕事ができる人材が見つからないことを証明する必要がある。これは労働市場テストと呼ばれている。簡潔にいえば、イギリスのポイント制度では、国内で同じようなスキルを持つ人材の職を外国人が奪うことを防ぎ、足りていない分だけの外国人を受け入れることができる。

<スウェーデン>
韓国とイギリスの例で、外国人受け入れのための国の具体的な制度を紹介した。しかし、どの国からも欲しがられるような高度人材については、ビザを優遇するだけで世界の人材獲得競争に勝つことができない。そのために、スウェーデンは街をあげて、高度人材が就労先、かつ移住先として選んでくれるような魅力作りに取り組んでいる。スウェーデンの特定の地域では、高度人材を呼び寄せるため、民間企業と公共団体、そして大学が共同でプロジェクトをスタートしている。情報提供のためのホームページ解説、配偶者の職探しの支援、子供が通うためのインターナショナルスクールの整備、学生の職探しの支援、家探しの支援などが含まれている。

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