【日本企業様向けコラム】地域社会との共生を目指して
地域社会との共生を目指して(1) 外国人受け入れの方針の大転換(単純労働者の受け入れへ)
日本は2019年4月から単純労働を含めた外国人労働者の受け入れ拡大に乗り出す。新しい在留資格は「特定技能」という名で、技能実習生が移行することを基本の形として想定されている。外国人労働者受け入れ拡大を進める出入国管理法改正案が国会で成立。新しい在留資格「特定技能」の対象14職種での外国人労働者の受け入れが始まる。新しい在留資格による受け入れ見込み人数は、図に示した通りとなる。介護や外食産業など14業種が「特定技能1号」に分類され、初年度に最大4万7550人、5年間で約35万人の受け入れが見込まれている。
新しい在留資格のポイントとして、(1)特定技能評価試験、(2)分野別運用方針、(3)受入れ人数枠上限、が挙げられる。特定技能評価試験は、「日本語試験」と「専門試験」に分かれることが公表されている。「日本語試験」の中の1つである「日本語判定テスト」は14業種同一テストになる予定だ。「専門試験」は各業種を所管する省にて創設される。実習生からの移行を除けば、特定技能1号の資格取得には業種別の技能試験に合格し、新設する日本語能力判定テスト(仮称)か現行の日本語能力試験を通過する必要がある。2018年12月19日、外国人労働者の受け入れを拡大する改正入管難民法に基づき新設する在留資格「特定技能1号」について、資格取得に必要な技能試験を来年四月から実施する業種が決まった。介護業、宿泊業、外食業の3業種にとどまる見通しだ。改正法は来年4月施行で、政府は14業種で特定技能1号の外国人を受け入れる方針だが、残る11業種の試験開始は来年10月や来年度内などとしており、当面は試験なしで移行できる技能実習生が担い手の中心になりそうだ。新在留資格による受け入れ対象は当面、9カ国とする。当初はベトナム、中国、フィリピン、インドネシア、タイ、ミャンマー、カンボジアの7カ国に1カ国を加えた8カ国を予定していたが、ネパールとモンゴルを加えた。来年3月までに9カ国と協定を結ぶ。
技能実習制度の研修などに限定してきた今までの政策はついに転換点を迎えることになる。移民政策は取らないと説明しているが、特定技能では、家族帯同の自由はないが、日本での5年間の就労が可能となり、技能実習時の5年と通算すれば、合計10年間働くことができる。この新制度(特定技能)を活用して、日本政府は、5年間で、約34万人の受入れを想定している。受入れ分野のトップ3は、1位介護(約6万人)、2位外食(約5万人)3位 建設(約4万人)、と想定している。
「移民」という言葉は使わない。理由として安倍政権の支持層が移民政策を反対しているためであろう。一方で、労働力不足に喘いでいる支持層も多くいる。そのため、移民という言葉を使わず、かつ特定技能という形で労働力を補完できる体制を作った。さらに、2年前の2016年5月24日、日本は独自に「移民」の定義をしている。自民党が掲げた労働力確保に関する匿名委員会の報告書「『共生の時代』に向けた外国人労働者受け入れの基本的考え方」において初めて「移民」について定義しているのだ。「移民とは、入国の時点でいわゆる永住権を有するものであり、就労目的の在留資格による受け入れは移民には当たらない」というものだ。つまり、入国時点で永住権を持っていなければ正規の労働資格を得て10年以上日本に滞在し、最終的に永住権を獲得したような外国人でも移民ではないという。
この移民の定義は将来的には制度を整えた上で単純労働の分野でも外国人を受け入れる準備をしていたもので、特定技能を見据えた定義であった。技能実習制度を3年から5年に伸ばしたばかりだが、その成果がわかないうちに新しい制度を作った。毎年40万人近くの労働力が減っている。まさに逼迫した状況の中、待ったなしの日本の労働力不足は、予想以上に早いスピードで進んでいると言って間違いない。
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地域社会との共生を目指して(2)外国人労働者を増やしていけるか?
単純労働者の受け入れに抵抗してきた日本だが、今回の制度の改正で、今までは高度人材だけ受け入れて行くという日本の基本方針が一気に変わった。外国人労働者なしには企業だけでなく社会も成り立たなくなっていく。移民政策は取らないと言いつつ、日本にきた外国人が生活者として社会の一員になっていくことを前提とした政策を日本政府が取り始めたということだ。外国人労働者を増やしていけるか、その答えは日本にすむ日本人が、今まで目を背けてきていた外国人受け入れ問題に真正面から向き合う必要がある。
外国人労働者を増やしていけるか、それには次のポイント(1)受け入れルールの構築、(2)公費による日本語教育の整備、(3)家族帯同措置の検討、をしっかりと検討することが重要だと個人的に考えている。
少子高齢化の国では、女性の出産率がとても少ないため、人口が減っていく。人口の縮小は、経済の低下を招きく。子供の数が減るという事は、国が高齢の人だらけになるという事になる。若者がいないと活気が生まれない。若い外国人労働者の定着は人口増加を通じて、労働者の人材不足の解消、さらには消費市場の活性化などの経済成長に寄与する。税金や保険料を収めれば社会保障の担い手にもなる。一方で、治安の悪化や、貧困集落の出現などのリスクも考えておく必要はあるだろう。安心して働け、生活できる環境の整備が前提となる。さらに外国人労働者が日本の雇用を奪うとの意見もあるがそれは制度の設計次第だ。国内の労働者だけでは充足されないことを確認する労働市場テストを実施し、受け入れ人数の上限を設けるなどの対応を行う。このようなことを含めた「外国人対策」「移民政策」といったルールに則った受け入れが重要であることは間違いない。
また、ルール以外にも生活を支援する体制整備が必要となる。特に外国人が日本社会に溶け込むには日本語教育は重要だ。社会に溶け込めない外国人が増えると将来、逆に大きなコストが生じる。自治体や企業に任せっきりにするのでは難しい。外国人労働者を受け入れているフランスやドイツなどは語学研修を義務付けそれらを公費で賄っている。日本として、公費による日本語教育の支援は力を入れる必要があろう。外国人との共生のためには国民がコストを支払う必要があるという意識を持つことが大切だ。
外国人労働者の家族をどのようにするかという問題にも向き合わなければならない。外国人労働者のワークライフバランスを考えた上で、日本が住みたい国になることが必要だからだ。受け入れ企業側も、外国人労働者への「安かろう悪かろう」の発想は変えなければならない。技能実習制度では安く外国人を使い倒す面がなかったとは言えない。単に一時的に必要となる労働力の確保という視点ではなく、社会・企業の成長にとって外国人は不可欠なものであるとの視点も欠かせない。もちろん一時的に必要な労働力も考えなくてはいけない。しかし人口の減少が進むからこそ、長期的に日本に滞在してくれる外国人労働者の受け入れが必要になってくる。現在のように大量に単純労働の外国人を呼び寄せ、期限が来たら大量に帰国をさせる仕組みは限界にきている。むしろ一定の外国人労働者に長期に滞在してもらうことができれば、毎年獲得しなくてはならない労働力を抑えることや、教育コストの削減となる。
2015年の1年間に新たに日本の労働市場に参入した外国人は39万人。毎年帰国する外国人が大量にいることを考慮する必要があるため、日本は年間約40万人の外国人の参入を確保しないと回らないところまできている。この規模の外国人労働者の受け入れは、世界的に見てトップ5に入る。それには日本が外国人労働者に選ばれ続けなくてはならない。日本を選択してくれ、家族と一緒に長期に住んでくれる外国人労働者がいる。そうであれば彼らを積極的に評価する意識への転換が必要だ。日本が高い技術を持つ外国人にどう選ばれる国になるかを考える時期にきている。今後日本は外国人労働者との共生は避けられない状況になってくることは間違いない。
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